メチレーションという代謝
1、精神活動や睡眠に重要なメチレーション
メチレーションという代謝をご存じでしょうか?
栄養療法を実践する医師の間でも難解な代謝として知られているのが、このメチレーションです。
炭素と水素からなるメチル基と言われる分子を結合する代謝をメチレーションといいます。
このメチレーションにより、精神活動や睡眠、エネルギー産生に必要な物質が合成されます。
とりわけ大切なのは、認知機能に必要なアセチルコリン、意欲・やる気に必要なドーパミン、集中力に必要なノルアドレナリン、精神安定に必要なセロトニン、睡眠に必要なメラトニン、脂肪燃焼に必要なLカルニチンなどが合成され、解毒物質もメチレーションで合成されます。
これにより私たちは心も体も健康でいられるのです。
また、炎症を抑える働きもあるので、この代謝が働かない状況では、炎症が長引くとともに、逆に長引いた炎症によりメチレーションが抑制されることにもなります。
あらゆる代謝の中で私は、このメチレーションが重要ではないかと考えています。
メチレーションが緩慢になると、疲労感をもたらし、メンタルが弱くなったり、あるいは精神疾患を発症したりと、各種の障害をもたらします。性格傾向にも影響します。
メチレーション代謝は、回路になっていて、左側のリメチレーションサイクルと右のメチレーションから成り立ちます。
2、リメチレーションサイクルに亜鉛が必要
リメチレーションサイクルは回路の左側であり、これがうまくいかないとメチレーションも回らなくなります。
リメチレーションサイクルで必要な栄養素は葉酸、ビタミンB2、B3、B12、鉄、亜鉛などのビタミンやミネラルです。
どの栄養素も重要ですが、特に亜鉛とビタミンB12が重要です。
亜鉛が不足するとこのリメチレーションサイクルが緩慢になり、結果メチレーションも低下して、先ほどの働きがダウンします。
メチレーションで合成される物質には、Lカルニチン、αリポ酸、コエンザイムQ10があるので、エネルギーの産生が低下する上、Lカルニチンから合成される認知機能の維持に必要なアセチルコリンの合成も低下することから、認知症リスクにも影響します。
この経路は鉛や水銀などの有害金属、活性酸素で抑制されるので、毒物が蓄積している人は、前述の疾患の他、性格にも影響を当たることになります。
この回路をしっかり回すには、大豆、ショウガ、ごま、カボチャの種などに含まれる亜鉛を摂取することが大切です。
3、解毒に必要な3つの物質
メチレーションが回転することで、ホモシステインが産生され、ホモシステインからグルタチオン、タウリン、活性硫酸など、3つの解毒物質が合成されます。
グルタチオンは、グルタチオンペルオキシダーゼやグルタチオンSトランスフェラーゼとなり活性酸素の処理や有害金属などの解毒に働きます。有害物があるとき、グルタチオンは大量に消費されます。同時に、グルタチオンの合成に必要なエネルギー物質、ATPが消費されます。
タウリンは、胃酸や胆汁酸を分泌し、さらに心機能を改善し、インスリンの分泌を促進し、有害金属の解毒にも作用します。
活性硫酸は、乳癌や大腸癌、自己免疫疾患の発症リスクを下げ、胆汁を分泌することで消化や解毒に働く他、環境ホルモンの解毒にも一役買っています。
この3つの物質を、タイラズメソッドでは「解毒3兄弟」と呼んでいます。
栄養療法的に病気を治療する際には、この3つの物質を意識する必要があります。
4、葉酸とB6、B12の働き
メチレーションサイクルや前述の解毒3兄弟の合成には、葉酸やビタミンB2,B3、B6,B12などのB群が働きます。
エネルギー物質であるATPを産生するにもビタミンB群は必要ですが、このメチレーションでもビタミンB群は重要な働きをします。
特に葉酸とB6、B12は中心的や働きをします。
B群全体を摂取するにはレバー、葉酸を摂取するには、大豆、ほうれん草、アスパラガス、キャベツ、B6を摂取するには、にんにく、牛レバー、ササミ、ごま、焼き海苔、サバ、玄米、牛レバー、落花生、アボカド、大豆、さつまいも、B12を摂取するには、しじみ、焼き海苔、すじこ、牛レバー、あんこう(肝)、牡蠣、たらこがお勧めです。
5、まとめ
今回は難しい話しをしましたが、まとめますと、ビタミンB群や亜鉛、鉄などのミネラルを含む肉、野菜、魚などを万遍なく食べることで、心も体も良好な生活がおくれますよ、ということです。
くれぐれも、偏りのない食生活をされて下さい。